私の育った環境、時代がそうだったのか子供時代を振り返っても、駄々をこねて泣きわめいたという記憶が殆どありません。涙はこっそりと隠れて手で拭うということが泣いた記憶のほとんどです。常に我慢(ガマン)の時代だったのでしょう。記憶の中で最も若い時の涙は中学生の時に隠れて友達と映画を見て涙が出たことを今でもはっきりと覚えています。中学生はまだ父兄同伴でないと映画館へは行けない時代でした。その時見た映画は題名も忘れていますが確かギャング映画で主演は鶴田浩二?だったかこれもハッキリとは覚えていません。悪集団が、追いかけてくる警官隊に向かって拳銃を撃っているシーンですがこの時代はまだ警官と言えども拳銃は持てなかったのです。記憶に残っているのはその流れ弾に当たって倒れた工事作業者の一人で、丁度食べていたドカ弁を握ったまま、その日の丸弁当がアップになりました。ご飯の横に数本の干イワシが転がっているのを見て子供心に思ったのは、食料がまだまだ不足していた時代に一生懸命弁当を作ってくれたおかみさんの悲しむ顔でした。警官の一人は「畜生!拳銃さえあれば!」と悔しがっている姿がダブってくるのですが映画が終わってからもこの警官と同じ気持ちで涙を振り払っていた自分を今でも思い出します。